通路脇に何気なく居る熟成の進む酢の軍団を横目に、文字通りの道草を食いつつ堆肥の山に落とした種粒は蔓を伸ばし、あっという間に家の周囲をぐるり走る何百個かの南瓜の隊列となった。
それから休まず動く手は、風呂の種火を生み、その欠片が焼酎に合う天ぷらをカラリと揚げ、次の朝までの温もりを守る。
野菜、調味料、茶、家具、竈、土壁!そう、全てを内包するこの家さえも。
生活の中をクルクル周遊しながら、彼は作る。
唄い、手ごねのパンを、オーブンから取り出すのと同じリズムで。
“目の前にあるものは全て誰かが作った”
だけど私達はそれを意識することを少なくした。
思わず、自分の手からは何が生まれただろうかと思い出そうとする。私には何が出来たんだっけ?
「やりたがりなんだよ」と笑う声が聞こえた。
錬金術師を訪ねる度に私は、その濃密な生活に酔いどれ帰るのだ。